■文化財■
社殿(本殿・拝殿・幣殿)は江戸中期の雰囲気を今に
伝える貴重な遺構として、平成2年11月6日、福島市
指定有形文化財(建造物)第55号に指定された。
本殿は、二重(もと一重)の切り石積基壇上に建てて、礎石・土台を省き、身舎は流れ造りながら桁行が勝るため、前後の軒の出は大きい。軸部は粽付きの円柱に横板壁、二重の繁垂木を用いる軒には支輪を付し、一手先の和様三斗で支えるが、妻飾りには虹梁大瓶束などの禅宗様の採用も見えている。
また、向拝の角柱上には和様の連三斗を組んで、板かえる股と虹梁を飾るが、脇障子の彫刻などとともに華美ではないが入念で繊細な気分が見える。
本殿の建立年代については、棟札の保存はないが、第11代社司・斎藤市太夫興義(元文5年没)の書者した『宝永7年寅年(1710)9月28日 八幡宮棟札写』が残されている。
拝殿は、高さ1メートル余の高い切り石一重基壇(もと礎石のみ)上に建つ中規模の平入社殿である。割拝殿などのこの地方独特の様式を取り入れ、明治年間頃の増築と見られる正面中央の向拝は、和様出三斗で疎垂木の軒を支え、縋破風の形をとっている。建立年代は明らかではないが、奉額等からみると18世紀末頃の改築と思われる。
長さ3間の幣殿も、拝殿と同じ頃の建立であると考えられる。
三社殿とも昭和12年頃に基礎を加える改造が行われたと伝え、いずれも原型より1メートル余高い位置に建ち、昔日とは異なった景観を呈している。
また、3世紀に及ぶ歳月を経て老朽化が著しく、平成3年に社殿の修復並びに本殿覆屋の新築工事が行われた。
■境内末社『村崎神社』■
祭神は大己貴命、少彦名命、瀬織津姫命の3柱。飯坂で最も古い神社
といわれ、病気平癒、商売繁盛、芸事上達の御利益があり、花柳界の
信仰が厚い。
■小祀『足尾神祀』■
足の守護神。併せて家内安全、交通安全、無病息災を願う講中の
信仰が厚い。講中祭は毎年4月15日、桜のもとで行われる。
さらに、境内には数多くの小祀が祀られており、古峰神祀、稲荷神祀、
山神、水神、道祖神、庚申塔などが鎮座する。これらの小祀は、静寂の
神苑の中にひっそりと佇み、風雪の歴史と昔日の庶民の哀歓を語りか
けている。